後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 そこか? つっこむのはそこなのか? 
 
 確かにアイラの胸は貧しい。貧しいどころかまっ平らだ。これから育つと期待したいが、たぶん無理なのもわかっている。

「まあ、いいわ」

 エリーシャは肩をすくめた。

「カーラならそれっぽい偽乳を作れるでしょ、必要となれば――どっちにしたって髪の色とかもあるし、一回魔術研究所に行かないとね」
「あの、あのですね、皇女殿下」

 ようやくアイラは口を挟んだ。

「エリーシャでいいわ。どうせ身内みたいなものなんだし」
「はあ、ではエリーシャ様」

 さすがに呼び捨てにはできない。

「胸の大きさの前に、顔が違うとか、髪の色が違うとか気にしなければならないことがあるんじゃないですか?」
「ああ、その点は大丈夫。ベースが似てれば、後はどうにでもなるから」

 そう言いながらもべたべたとエリーシャはアイラの身体をなで回す。

「うん、いい筋肉してるね。剣は使えるんだって? でもまあ、長剣は持ち歩けないからさ、スカートの中に短剣隠しておいてよ。短剣は近々ウォリンが用意してくれるはずだから」
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