後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 聞き慣れない名前にアイラは眉を寄せるが、それがゴンゾルフ団長の名であることを思い出す。皇女は彼を名で呼ぶのに抵抗がないのだろう。

「ああ、そうそう。ちょっとさ、今から酒盛りしようよ。あんたの歓迎会」
「今からですか?」

 夕食前なのにいいのだろうか――というより、皇女と一緒に酒を飲んで大丈夫なのか? 後宮のしきたりはわからない。

「イリア! ファナ! ワイン持ってきてよ! 後つまみもよろしくー!」

 アイラを侍女部屋の方に押しやりながら、エリーシャは声を張り上げた。

「強烈でしょう、エリーシャ様」

 ふらふらと皇女の部屋から出てきたアイラにファナが言う。

「というわけで、護衛、よろしく! 今後はわたしたちは呼ばれた時しか行かないから!」

 ぴしりと指を突きつけられた。アイラはまだ詳細を聞かされていないが、この二人は剣はまるっきりだめだということなのだろう。

「……でも、いい方だから大丈夫」

 イリアがフォローしてくれたのだが、アイラはすでにやっていく自信を失いつつあった。
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