後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 無言のままライナスは頭を下げる。その肩にフェランはぽんと手を置き、またなとアイラに言い残して退出した。

 ライナスとフェランも続いて事実上の裏口となった隠し通路の方へと歩いていくのを見送って、侍女たちもそれぞれの部屋へと下がっていく。

「誰か足りない気がしますねぇ……」

 アイラは首を傾げた。

「あ、ダーシー様!」

 エリーシャの婚約者であるダーシーがいない。

「いいのいいの。あれ、いても何の役にも立たないし。それに客人泊めるところまで使いを出していたら目立つしね」

 さらっと婚約者を役立たず扱いして、エリーシャはアイラを振り返る。

「彼には後で説明するわ。そろそろ寝ましょうか」

 久しぶりに自分のベッドで眠ることができる。アイラはベッドに飛び込んで、夢も見ずにぐっすり眠った。
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