後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 翌朝は、エリーシャの方が先に起きだした。主より遅く目覚めるとは失態だとアイラは青ざめたけれど、エリーシャはアイラは疲れているのだからと気にした様子もなかった。

「皆ぐっすり眠れたかしら?」

 居間に朝食を運ばせたエリーシャは、パンをちぎりながらたずねた。イリアとファナの二人が厨房から運んできた朝食は、アイラが旅の間食べていた庶民の食事とは比べものにならないほど上等で品数も多い。

 ゆで卵にたっぷりと塩をふったアイラは、それを一息に飲み込んでからパンにかぶりつく。

「果物欲しい人は?」
「はーい」

 ファナにたずねられて、エリーシャは手を上げた。アイラも同様に手を上げる。果物の皿が座っている者たちの間を行き来して、皆自分の好きな品を手元に置いた。

「ハムが欲しいんだけど」

 ベリンダの前には、ハムの皿が滑らされた。

「ジェンセンは、ユージェニーと会えたのかしら」

 パンのお代わりをしながらエリーシャは半ば独り言のように問う。
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