後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 後宮の住人たちは、皇帝の召集がかかれば集まらなければならず、ちょうどこの日は全員そろっての夕食会が開かれることになっていたようだ。

 着替えたエリーシャは、アイラ、ファナ、イリアの三人の侍女を引き連れて食堂へと向かう。
 
 自室内にいた時の自堕落な様子などまるで感じさせない。背筋はまっすぐに伸びているが、目はわずかに伏せている。しずしずと歩く様は、気品にあふれていた。
 
「アイラ、あなたはエリーシャ様のすぐ後ろに」

 イリアがささやいた。

 言われた通り、皇女の後ろにアイラがつくとその後ろにイリア、しんがりにファナがつく。

 食堂の空気は、どこか禍々しいものをはらんでいた。当然といえば、当然なのかもしれない。

 長いテーブルの上座には皇帝ルベリウス、そのすぐ側に皇后オクタヴィア、反対側の隣には皇位継承者であるエリーシャ、エリーシャの異母弟にあたるセルヴィスにその母リリーア。

 その下座にはルベリウスの寵を受ける女性たち――それぞれの意味は違えど、皇帝の愛をもとめる者ばかりが並んでいるのだから。
 
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