後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「途中でダーシー様に呼び止められまして。皇女宮の書庫でなるべく早くお会いしたいとのことなんですけど。皇女宮に立ち入る許可は皇帝陛下からいただいたそうです」

「そう……、わかったわ」

 エリーシャの決断は早かった。

「夕食後に、と伝えて。それから書庫を片付けてお茶の用意を」

 皇女宮に閉じこもっていた間に書棚の数も増えて、今では床に散らばっている本はない。テーブルを入れれば食事をする場所くらいは確保できそうだ。

「あ、テーブルは低い方を入れるのよ。床に座るんだから。イリアとファナは夕食終わったら自由時間にしてもらって」

「かしこまりました」

 居間でくつろぐ時には、エリーシャは床に直接座ることを好む。それがわかっているから、アイラはエリーシャの指示に驚いたりしなかった。

 今日のエリーシャは前宮で、外国から来た高官たちと一日中会談しなければならないらしい。帰ってきた時には疲れて怒りっぽくなっているんだろうなぁと思いながら、アイラはイリアとファナと協力して食事の場を整える。
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