後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「……どうしてそんなことを……」

 アイラとジェンセンの会話を聞いていたエリーシャはぽつりと言う。そのエリーシャに、ジェンセンは無情な宣告を下した。

「タラゴナ皇室に対する復讐です、エリーシャ様」

「復讐って……どうして。だって、彼はわたしと婚約してて、いずれは女帝の夫になるはずで、だからいずれ事実上の最高権力者に……」

 エリーシャは、本当に理由がわからなくて困惑しているようだった。

「――それは」

 ジェンセンが言いよどんでいると、皇女宮の外から爆発するような音が響いてきた。

「――結界が破られた!」

 ベリンダが血相を変えて立ち上がる。

「ジェンセン、わたしが行く! 皇女殿下を頼む!」

「馬鹿言え、おまえが残れってーの! 皇宮の結界破るってーのは相当な使い手だぞ! アイラ、これ床に書いとけ! ベリンダ、後頼む! いざって時はアイラの陣を使え!」

 アイラに向かって一枚の紙切れを放り出すと、ジェンセンは慌ただしく姿を消した。

「ベリンダさん、敷物寄せて! エリーシャ様、部屋の奥に!」
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