後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「そのイヴェリン・ゴンゾルフ様が……わたしに、何か?」
「君は今から休憩のようだな。店主にかけあって、奥の部屋を確保してくれ――君に大切な話がある。食べながら話そう」

 立ち去りかけるアイラに、後ろからイヴェリンが声をかける。

「そうそう、料理の方も頼む。昼食がまだだったのでな――アイラ、君も一緒に食べるといい」

 皇宮騎士団からの使いというからには、何か大切な用があるのだろう。
 
 逆らうことなんて思いつきもしなくて、アイラは奥にいる店主にイヴェリンの言葉を伝えた。

 イヴェリンを目の前にして落ち着いて食べられるなんて思わなかったけれど、アイラはおとなしくイヴェリンの言葉に従った。
 日替わりランチを二つ店主に頼んで、できあがったところで奥の部屋に運び込む。

 白い上着を椅子の背にかけて、彼女は脚を組んで待っていた。羨ましいくらいに脚が長い。

 テーブルの上にできあがったばかりの料理が並ぶ。
 
 白身魚の香草焼きにマッシュポテト、野菜スープにオーブンから出したばかりのパン。焼きたてのパンの香りと香草の香りが食欲をそそる。
< 4 / 394 >

この作品をシェア

pagetop