後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
「この店に来るのは初めてだが、なかなか旨そうだな」

 イヴェリンは、絹の手袋をテーブルに放り出す。その一つ一つの動作が妙に様になっていて、アイラは思わず見とれた。
 
「すまない、ワインももらえるかね?」
「すぐにお持ちします」

 店主に言って、店最上級のワインを出してもらう――もう一つのグラスは、アイラ用に水を入れた。
 
 ナイフとフォークを手に取ったイヴェリンの食欲は旺盛だった。
 
 流れるような仕草で皿に盛られた料理を口に運ぶ。あっという間に食べ終えて、ナプキンで口元を拭った時、アイラはまだ半分しか片づけていなかった。

「さて、アイラ」
「な、なんでしょ?」

 どぎまぎしながら、アイラは返した。慌てて残りの魚を口に放り込む。
 パンは半分残して食事を終えた。
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