後宮に売り飛ばされたら皇女を押しつけられました
 アイラの声が低くなった。

「そうだな、ざっと見積もって一千万デイン」

 アイラは頭を抱えたくなった。一千万デインと言えば、場所によっては家一軒買えるだけの金額だ。さすがに皇都ロウボーンでは無理だろうが。

「そんなお金……」

 心細げにアイラの声が揺れる。確かに生活力皆無の父ではあるけれど、まさか古くからの友人に無心していたとは知らなかった。しかもそんな金額を。

 確かに夫婦そろって皇宮騎士団につとめていて、それも団長、副団長となればアイラの想像もつかないような金額を稼いでいるのだろう。そうでなければ、一千万デインなんて大金、貸してくれるはずもない。

「返せないよな? そうだろう、そうだと思っていた」

 なぜか、にこにこしながらイヴェリンは言った。

「実は、最後に借金に来た時、ジェイセンはこれにサインしているのだよ――君の身柄はわたしと夫のものだ」

 ひらりとアイラの前に差し出された一枚の紙。いろいろな契約条件が記されてはいるが、要約すればこう記されてあった。

『期日までに返せなかった場合は、娘は好きにしてかまわない』
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