本気で大好きでした。
そして

さっきあたしの腕を引っ張った看護師さんが再びあたしの腕を掴んだ。


「いまはお母さんのそばにいてあげたほうがいい。きっとあなたが後悔するわ」

ただ一言そういい、あたしをお母さんのそばへ引っ張った。

あたしもお母さんの手を握ってみる。


小さい手

かさかさになった手

白く血管の浮いた手

すごく温かい手



お母さん……


「ごめんねお母さん。いい娘じゃなくって。ごめんねお母さん。悪いことばっかして……」


あたしがそう言ったのを聞いて、お父さんは涙を流した。

那緒は俯きながら、お母さんの手をただただ握っていた。


「本人の希望で延命治療は致しません。最後に声を掛けてあげてください。」

「最後なんて言わないでよ……。あたしはお父さんとお母さんに育ててもらえなかったけど、それでもたまに会えたり大きくなってから色々話したりして、心の底からこの2人の子でよかったって思ったよ… お母さん、ありがとう」


そう言って、那緒は反対の手で涙をぬぐいながらにっこり笑った。

すごく悲しそうな顔だった


「めぐみ… また待たせちゃうけど…、俺が行くまで待っててくれな………」


お父さんがそういうと、そっと涙を流していた。


れなは、病室にあるソファーでただただケータイをいじっていた。


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