君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】




「紀天、何やってんだよ。
 今から、最終の打ち合わせだってさ」

「悪い、すぐに行くよ」



そのまま打ち合わせを終えた後、
俺はAnsyalのオフィシャルblogへとノーパソからアクセスする。



そこには今日もファンからのメッセージが何通も届く。





「おっ、来てる来てる。

 昼間、俺が受信した時にも40通ほど来てたけど、
 二時間の間に、20通も追加か」


そう言って、ノーパソの画面を覗き込むTAKA。



「そうだ……最近、ファンメで似たような問題が取り上げられてるみたいで、
 少し気になってたんだ。

 託実、Ansyalがまだ俺と二人だけだった頃、
 今よりももっとファンは少なかったよな。
 
 でもメンバーが増えて、ファンも増えてきたのと同時に、
 ファンマナーも気になるようになってきただろ」


「あぁ。
 
 それだったら、俺のファンレターの中にも、
 ファンの中にゴミ拾いとかやってる人を見かけて、
 びっくりしたのと同時に私たちもやりたいって思えるようになったって」


「そうそう。

 だけどそのゴミ拾いをしてくれる子、他にもマナーが悪い子に注意して
 ファンマナーの改善に尽力してくれてるみたいなんだ」




Takaと託実の会話を黙って聞きつづけてた俺は、その噂の主が晃穂のことだろうと推察する。




「だけど……Takaさん、託実さんそれって反感を買いませんか?」



静かに告げた祈の言葉に、
俺はさっきのアイツの行動を思いだす。





ネットで届いたファンメに、
眼を通していた尊夜はとあるメッセージに手を止めた。




「ちょっと、これ見てくれよ。
 話題のその子、何度か呼び出されてるっぽいな。

 呼び出されてるのはわかるけど、怖くて顔を突っ込めない」





晃穂?
アイツが呼び出し?



アイツが?




待ってろ、どうなってもいい。
俺がお前を見つけ出して、ガツンと言ってやるから。




勢いに任せて楽屋を飛び出そうとした俺の前に、
尊夜は無言で立ちふさがった。



「尊夜、退けよ」

「目を覚ませ、紀天」



次の瞬間、アイツのパンチが俺の頬を打ち付ける。


吹っ飛んで床に叩きつけられた俺は、
唇周辺を拭いながら立ち上がる。


< 156 / 245 >

この作品をシェア

pagetop