君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】

11.アイツの存在 -紀天-



エメラルドホール開演時間。
いつものように始まるoverture。


幻想的なインストが流れる会場内。



ドライアイスが噴出して俺たちは順番に、
ステージへと飛び出す。



メンバーにアイコンタクトを送って飛び出す前に、
尊夜と健闘しあうように手を重ねた後、
愛用のドラムスティックを掴んで光の中へ飛び出す。




一斉に湧き上がる歓声。



そして会場内は、
俺の名前で統一される。




中央、上手、下手と順にファンの顔を見ながら
じっくりと見渡すアイツの姿。





アイツが居ない?
やっぱり楽屋に届いた情報は晃穂?




そんな不安が押し寄せる中、俺はスティックをEIJIさんみたいに掲げて
自分の相棒、ブラックビューティーの元へと移動した。



Rapunzel、Ansyal。





アイツは何時でも、
何処でも全てのLIVEに顔を出してくれていた。



そして今日も「今から行くよ」って
メールを送ってきてた。




そんなアイツが会場に来ていない。



グルグルとアイツの事ばかり過ってる間に、
他のメンバーはステージに上がっていた。




最初の曲が始まる。



ギターの劈く【つんざく】ようなサウンドが会場内に響いて、
それに重なるように、託実のベースが地を這うように重なる。




それを受けて叩き始める俺のドラムは、最初から散々で、
走りがちになるリズムを抑えるように前方でプレイをしていた
託実がドラムの傍まで下がってきた。



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