君を守る陰になりたい【Ansyalシリーズ 憲編】




本来のフィアンセ同士。



瑠璃垣怜皇と咲空良さんの子供として
穏やかに生まれることが出来ていたらどれだけ幸せだっだろう。




そして……廣瀬睦樹。


オレの親父と葵桜秋さんの名を持つ咲空良さんの子供として、
弟の尊夜として過ごしてこられていたら、どんなふうに生きていただろう。



そのどれもが、
もう取り戻すことの出来ない奪われた時間。



そんな奪われ付けた時間の中で
自分を支えてくれた、伊吹さんとの別れ。




そして自分自身が本来の名とわかたれて、
伊吹さんとして一族の為に生き続けなければいけない時間。





そんな重荷を背負い続けて、
これからの未来を歩き続けるアイツ。




運命に翻弄されて、
二重に持たされた籍。



そんな弟を見つめながら、
オレは力強く抱きしめた。




一週間後、
オレたち家族は瑠璃垣の屋敷を後にした。



泣いていたのが嘘みたいに、
次の朝から、アイツは瑠璃垣伊吹として
立ち振る舞い続けた。


オレ俺たちも、今出来る事をと親父が怜皇さんの親友であること、
伊吹がオレのジュニアであること、
咲空良さんが、葵桜秋さんの姉妹であることを理由に
アイツが落ち着くまで滞在することが許された。


少し無理してるのかもと感じさせることもあったけれど、
それでも、それがアイツが決めた選択だから。



オレはただ黙って、
アイツを守っていくだけ。





「じゃ、また昂燿でな」




そう言うと、親父の車に乗り込んで自宅へと帰った。




一つが片付いた後、車内でオレが思うのは晃穂の一件。




約束を破ったあの日、晃穂は智海の家に泊まったことを
凌雅からのメールで知った。




車内から携帯を発進させて、
その日の出来事を凌雅から知識として情報を入れる。



家に戻ったオレは、そのまま荷物だけを自宅に投げ入れて、
アイツの家の玄関を潜った。



チャイムを押すけれど、
中からは誰も出てくる気配がない。


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