さよならの魔法



許せなかったんだよ。

後悔していたんだよ。


お前が知らなかっただけだ。



「紺野くん、彼女がいるじゃない。その彼女を差し置いて、あの地味女のプレゼントをもらう意味が分かんないわ………ほんと。」


磯崎は呆れた様にそう言って、取り巻きを引き連れて、教室から出ていった。





(これって、やっぱり………そういうことだよな?)


ポツンと、手のひらに収まった箱。

水色の小さな箱をぼんやりと見つめ、自問自答を繰り返す。


バレンタインデー。

愛を伝える日に準備してきた、綺麗にラッピングしてきた水色の箱。


鈍い俺でも、分かる。



磯崎の言う通り、この箱の中身はチョコレートなのだろう。

今日という日の為に、天宮が作ってきたチョコレートなのだろう。


問題は、誰の為に作ってきたのか。

それだけ。



(本当に、俺に………?)


あの天宮が、俺に渡そうとしていたのか。

俺の為に作ってきたというのか。


単純だ。

ほんと、単純な男だ。


俺ってヤツは。



それだけのことで、心臓が跳ねる。

大きな音を立てて、飛び跳ねる。


浮かれるな。

思い上がるな。

茜とのことで、懲りていたはずじゃないか。



何度考えても、信じられない。

自分の名前が書かれたカードを手にしても、自分に宛てられた小さな箱を手にしても、未だに信じられずにいる。


ソワソワする体に違和感を感じていたその時、グイッと強く、俺の体は後方へと無理矢理引っ張られた。



「………!」


振り向けば、そこにいたのは茜で。

眉を吊り上げて、怒りを露にしている茜が真後ろに立っている。


さっきまで、離れた場所にいたはずなのに。

教室の真ん中で、林田と楽しそうに話をしていたはずなのに。


林田と話をしていたはずの茜が、強く俺の手を引いていた。



「………ユウキ。」

「茜。」


名前を呼んでも、愛おしさは感じない。

呼び合っても、心と心が通わない。



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