さよならの魔法
赤という色は、茜にとてもよく似合っていた。
明るい茜に、華やかさを添える色。
内面性とよく似ているから、こんなにも赤という色の衣装を着こなせるのだろう。
元カノ。
だけど、今は友達である茜。
形は違う。
関係は全く別のものなのに、隣にいるのは去年と同じ女の子。
それって、どうなんだろう?
よくあることなのだろうか。
付き合うということも初めてだった俺には、茜の感覚がいまいち分からない。
仮にも付き合っていた男と、もう1度友達に戻れるものなのか。
笑って、自分を振った男の隣にいられるものなのか。
隣にいても、恋愛感情は湧くことはない。
それだけは、はっきり言える。
もう、元には戻れない。
戻れるのなら、別れを選ぶことはなかったはずだ。
茜が何を考えているのかが、分からない。
昔も、そして今も。
「何だよ?茜、今、シフトに入ってない時間だろ。」
素っ気なく、茜に答える俺。
俺と腕を組もうとする茜を、自然な動作でスッと避ける。
そう。
今日のシフトは不公平にならない様に、全てくじ引きで決められていた。
1人だけが長い時間になることがない様に、順番を決めて。
くじ運がない俺は、すぐに朝イチの店番のシフトを引いてしまった。
茜は確か、午後のシフトに組み込まれていたはずだ。
みんな、自分のシフトでない時間は、出歩いている。
中学で最後の学校祭だ。
小さな規模とはいえ、憂鬱な学校生活での数少ない楽しみの1つなのだから。
出歩いていると思っていたばかりの茜が、何故かここにいる。
自分のシフトでもないのに、俺の隣に立っている。
そのことが、俺は、不思議でならなかった。
「………ユウキ、冷たい。」
「別に、冷たくなんかない。」
「もう、その態度が冷たいの!」
冷たい。
そう言われても、態度を変えるつもりは俺にはなかった。
これ以上に優しく接することは、これから先もないだろう。