さよならの魔法
『新生活』
side・ユウキ







ガタン、ゴトン。


線路を走る、車輪の音。

その音に耳を傾けながら、俺は今日も電車に揺られて、学校へと向かう。



新たな学舎は、電車で1時間もかけて行く場所にある。

必死に勉強して合格した、県内でもトップレベルの進学校。


念願の電車通学は、予想通りに楽しいものだった。

窓際の席に陣取って、音楽プレイヤーに入れた曲を毎朝聴いている。



イヤホンから聴こえる、お気に入りの曲。

車窓を流れる景色は、駅を通り過ぎる毎に目まぐるしく変わっていく。


お気に入りの音楽と流れる景色があれば、暇だなんて感じない。

長い通学時間も、自分なりに楽しんでる。


たまに寝過ごして、何個か先の駅に着いていたこともあるけれど。










「おっはよー、紺野くーん!」


長い通学時間を経て、教室へと入れば、まだ見慣れぬ制服を着た男が話しかけてくる。


真っ黒なブレザーに、キュッと締めた青いネクタイ。

着崩さずに着ていられるのは、あとどれくらいか。


目の前にいるのは、俺の中学時代からの悪友である男。

矢田だ。



(はあ………。)


運命というものは、本当に存在しているのかもしれない。

矢田を見ていると、つくづくそう思う。


運命を信じたくもなるよ。

すごく嫌だが。



矢田との腐れ縁は、高校生になった今でも健在だった。


同じ高校に入学しただけでは終わらなかった。

何の因果か、再びクラスまで一緒になってしまったのだ。


これでは、中学1年の頃と同じじゃないか。

そう思うのも、無理はない。




「矢田、話がある。」

「なーんだよ、紺野くん。」

「………お前なー、紺野くーんとか呼ぶな!お前に『くん』付けで呼ばれると、寒気がするんだよ!!」


大体、男に紺野くんとか呼ばれたって、可愛くも何ともない。

嬉しくなんかないし、気持ち悪いだけだ。


話したことがないヤツならともかく、昔馴染みのこの男なら尚更。



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