さよならの魔法



怖いんだ。

怖くて堪らない。


千夏ちゃんや千佳ちゃんに、そう思われることが。

そう言われてしまうことが。



考えるだけで、体が震える。

拒絶反応を起こして、思考回路まで止まってしまう。


でも、千夏ちゃんと千佳ちゃんは、いい意味でそんな考えを裏切ってくれた。




千夏ちゃんも千佳ちゃんも、裏表というものがない人だった。


思ったことは、何でも口にして。

考えたことはわりと顔に正直に出て、面白いくらいに分かりやすくて。



確かに、見た目は派手だ。


メイクだって濃いし、制服のスカートだって短い。

違う人種なのだと、以前の私なら気後れしていたことだろう。



だけど、分かるよ。

今は分かる。


同じ時間を過ごしてきた今、実感出来ること。


この2人なら、信じられる。

この2人は、嘘をつかない。



どんなに純朴そうに見えても、人の心のうちは違うことがある。

純粋そうに見えたとしても、その人が何を考えているかなんて、本人にしか分からない。


人間は、見た目だけで決まるんじゃない。

見た目だけで、全てを見抜くことなんて出来ないのだ。



外見が派手だったとしても、この2人の心は透き通っている。


例えるなら、ビー玉の様に。

透明なガラスで作られたビー玉みたいに、何の曇りもなく、キラキラしてる。



信じるよ。

信じてみたいんだ。


もう1度だけ、他の人を。

誰かと信じてみたいと、そう思える様になった。



そう思わせてくれたのは、この2人の力。


初めて声をかけた私に、笑顔で応えてくれた千夏ちゃん。

疑うこともなく、私を真っ直ぐ受け入れてくれた千佳ちゃん。


2人のお陰。










きっと、この2人になら、心を開ける。

彼女達の心を開ける相手になりたいと、そう思う。


1度は、全てを捨てた。

生まれ育った町を捨て、人間関係も捨てて。



そして、私は生まれ変わった。


全てを捨てて、新たな宝物を手に入れたんだ。



< 317 / 499 >

この作品をシェア

pagetop