さよならの魔法
「どこに行くの!?これから、2次会が始まるんだよ………?」
「それは………」
「2次会が始まるのに、どこに行くの………!?」
涙で濡れていく茜の顔が、脳裏をよぎる。
「俺、天宮に用があるんだ。………話がある。」
そうだ。
俺は、茜にそう言った。
天宮を追いかけることを伝えて、そのことを隠そうともしなかった。
ありのままを、茜に伝えてしまったのだ。
もう、後悔なんかしたくなかった。
後ろばかりを見て、生きていくのが嫌だった。
ただ、その思いだけで。
直後に思い出したのは、天宮の言葉。
「紺野くん、あのね、私………紺野くんのこと、好きだった。」
俺もだよ。
俺も同じだったんだ、天宮。
俺も、天宮のことが好きだった。
自分でも気が付かないうちに、天宮に惹かれていたんだ。
「さよなら、紺野くん………。」
嘘だ。
嘘だろ。
嘘だって言ってくれ。
行くなよ。
まだ行かないで。
待ってくれよ、天宮。
まだ足りない。
全てを伝えていないんだ。
伝えきれない気持ち。
俺の中で疼く、芽生えたばかりの恋する気持ち。
甘さなんてない。
ほろ苦さだけが残る気持ちを、君は知らない。
きっと、これからも知ることはない。
「………会えたよ。」
会えたけど、それだけだった。
ありがとうという言葉しか言えなかった。
あの頃抱えていたジレンマも、今の気持ちも、言いたいことを全て伝えられた訳じゃなかった。
6年前も、後悔してた。
ああ、あの時、天宮を助けてあげられていたら。
天宮の心が壊れる前に、手を差し伸べられていたらと。
6年経った今も、俺は別のことで後悔している。
俺は、同じことを繰り返しているのかもしれない。
「ねえ、ユウキは………どうして、天宮さんのことを追いかけたの?」
俺が言葉を発する前に、茜が畳みかける様に感情的に言葉をぶつけてくる。