さよならの魔法
『初めての彼女』
side・ユウキ







初めて、大切な存在が出来た。


自分ではない、誰か。

その誰かを、愛おしく想う気持ち。


まだ生まれたてのこの気持ちは、これから伸びていく可能性を秘めている。



両想いだからって、同じ重さの気持ちで吊り合っている訳ではない。

そりゃ、同じ重さの気持ちを持っているカップルもいるのだろうけれど。


俺と茜の場合は、残念ながら違うと思う。



100パーセントの気持ちかと問われれば、答えはNO。

告白してくれた茜は、きっと100パーセントだとしたらの話。


俺は、まだそこまで達していない。

茜には、ほんとに悪いと思うけど。



だって、ついこの間まで友達だったのだ。

クラスメイトとして、女友達の1人としてしか、茜のことを見ていなかった。


不器用なタイプなのだと、自覚している。

俺は、そんなに急には変われない。


きっと。



それでも、好きになれたらいいなと思う。

大切にしてあげたいとも思っている。


1年の時から、俺のことを慕っていてくれた茜。

俺のことだけを見ていてくれた茜を、幸せにしてやりたい。


俺の手で。





矢田に罪悪感を抱いたのは、今でも忘れられない。

アイツの驚いた顔は、鮮明に覚えている。


一瞬だけ見せた、泣きそうな顔。

垣間見せたその顔を隠す様に、アイツは笑った。


俺のダチは、事実を笑って受け入れた。



「それって、ほんと?」

「ああ………。」

「うーわ、紺野に先越されるなんてなー!」


軽口を叩いてそう言ったのは、アイツなりの防衛本能からなのか。

傷付いた心を晒したくないが為の、強がりで言った言葉だったのか。



これでも、その事実を告げる時には勇気が要ったのだ。


俺は知っていたから。


矢田が、茜を特別な目で見ていたこと。

冗談なんかではなく、多分、本気で好きだったことを。



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