さよならの魔法



1つ1つの学校は、とても小さなもの。

潰れかけの廃校寸前の学校だってある。


でも、集まれば、それなりの人数にはなるのだ。




ざわめく集団。

昇降口の前。


ガラスに張り出された、クラス分けの名簿。

文字が並ぶだけのその名簿に、新しいクラスメイトになる子達の名前が連なっている。



人だかりを必死に掻き分け、ようやく名簿の前まで辿り着く。


背が大きくない私にとっては、こんなことでさえ一苦労。

前に進むのだって、簡単なことではない。



ドクン。

ドクン、ドクン。


妙なくらいに高鳴る鼓動と、全身を包み込む緊張感。



これで決まるんだ。

中学生になってからの1年間が、このクラス分けによって大きく左右される。


大袈裟だと思うかもしれない。

普通の人にとってみれば、クラス分けなんてそこまで大したことではないのだと思う。


でも、私には重要な意味を持つんだ。

このクラス分けは。




1年3組。

そう書かれた名簿の中に、ようやく見つけた自分の名前。


1年3組 出席番号18番、天宮 春奈。


同じクラスの名簿の中に、ある人物の名前が含まれていないことに密かに胸を撫で下ろす。



(良かった………、ほんとに良かった………。)


別のクラスになったんだ。

あの子から離れられるんだ。


私が探していたのは、私をいじめていた女の子の名前だった。







小さい頃から、家の中でばかり遊んでいた私。


絵を描いて。

色を塗って。


外でみんなと走り回ることよりも、部屋の中で自分の世界に浸ることの方が好きな子供だった。



引っ込み思案で人見知り。

元の性格は暗くないはずなのだけど、どうしても慣れないと他人と打ち解けることが出来ない性分だった。


自覚はしてる。

しかし、そう簡単に直るものでもない。

変えられるものでもない。



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