さよならの魔法
周りから大人しいと評される私がいじめられるのに、そう時間はかからなかった。
子供って、無邪気。
無邪気さ故の残酷な振る舞い。
きっかけなんて、自分でも思い出せない。
きっと、些細なことだったんだろう。
暴力。
罵倒。
そういう目に見えるいじめはなかったけれど、影ではよく悪く言われていた。
聞こえないフリ。
何もなかったフリ。
みんな、そうしてた。
誰もいない。
いじめられている私のことを助けようとする人なんて、どこにもいない。
クラスが1つしかない小学校では、クラス替えも期待出来ない。
我慢するしかなかった。
どんなにつらくても、歯を食い縛るしかなかった。
抜け出せない。
地獄の様な時間だけが、ループしていく。
それが、2年間続いた。
中心人物は、クラスのリーダー的な存在の女の子。
同じクラスになりたくない。
中学生になれば、たくさんの同級生が出来る。
クラスも増える。
クラスが1つしかなかった小学校とは、違う環境になるのだ。
お願い。
神様でも、何でもいい。
あの子とだけは、同じクラスになりたくない。
どうしても、同じクラスになりたくない。
その女の子と同じクラスにならないことだけを、この春休みの間、ひたすら願い続けていた。
この町は好き。
でも、人間関係は大嫌い。
閉鎖的で、とても狭くて。
逃げ出すことさえ叶わない、そんな小さな世界。
だけど、私はちっぽけで。
そんな小さな世界を嫌悪しながらも、そこから逃げ出す術を知らない。
子供だから。
小学生だったから。
この小さな町を飛び出したくても、そうすることが出来ない。
お金がない。
親にも、到底許されない。
それが、私の現実だった。