偽りの婚約者




「お願いっ……こんなのないよ。放してよっ!」



私に気持ちなんか、ないくせに……。


どんなに抗っても退いてはくれず押さえつけている手には逃がさないというように更に力が加わった。



痛さと恐怖で涙が出て来て頬を伝う。



頬に唇が落とされて流れている涙を吸われた。



拘束している力が少しだけ緩んで、でも掴んでいる手はそのままで放してくれる気はないようだ。


「恐いか?お前は初めての経験なんだろう?
ここまでする、つもりはなかったんだ。
だけど、それを変更させたのはお前だ」



「やだっ!!こんなの間違ってるよ」



「何が間違ってる?」


「……好きじゃない……でしょ」


「何?」

「だからっ、私の事なんて好きでもないくせに」



「好きだ」


何……言ってんの?
好きだなんて、そんなの……、すんなり抱く為の嘘なんでしょ?





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