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 胡桃は辺りを見回した。たしかに乗客はいるのだが、みんな眠っている。
「尊敬するフウさん。なら私達のプロデュースしてよ。才能を見いだすのが真の天才っていいます」
 鳩葉が沈黙の口火を開いた。
「面白いことをいうね」と銀次は言い。「一つだけ条件がある」と人差し指を一本立てた。
「なんですか?」
 と鳩葉。
「胡桃さんが僕の彼女になれば、だ」
 銀次は、笑みを見せた。鳩葉の視線が胡桃に注がれる。純粋無垢であり潤いを纏ったつぶらな瞳に、胡桃の答えは決定しているようでならない。なので、
「試用期間という名目でなら」
 と胡桃は応えた。
 鳩葉は拍手をし、銀次はフウと一息ついた。
『まもなく終点、赤城、赤城、終わりが始まり、赤城、赤城』
 とユーモア全快の車内アナウンスが流れた。
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