HELP

四号車

 妊娠が発覚し嬉しさの反面、高校生の身分で育てていけるだろうか、と梨花は不安だった。迂闊だった。しかし、マモルはコンドームをしっかりとつけていたはずだ。もしかして、興味本意でゴムを外したのかもしれない。その考えを拭い去り彼女は頭を横に数回振った。
 三号車では先ほどの綺麗な女性の後ろ姿が見えた。先ほどの凝視の件があり、なんだか気まずいと思い梨花は足早に立ち去ろうとした。
 が、「ねえ、ちょっと」と呼び止められた。
「はい」
 と教師達にもした事がない歯切れのよい返事を、梨花は放つ。ゆっくりと後ろを振り向いた。「さっきは、無礼がありまして」
「無礼って」と女性は笑い、「最近の学校教育って武士社会でも教えてるの?」と挑戦的な眼差しを梨花に向けた。
< 179 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop