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三号車

  都会にいても下町にいても、人ってたくさんいるんだな、とあげまんじゅうを食べながら鈴音は思った。焼きたてだから、と店員に連呼され、仕方なく三個買った。その選択は常に感情を殺し、無表情を崩すことのない鈴音を幸福な気持ちにさせた。
 美味しい。
 手の平サイズのあげまんじゅうに、人類がこれまで培い、積み上げてきた〝愛〟が詰まっている。少しばかり血糖値が上がり、頬がきゅっと持ち上がり、幾分か体温も上がる。簡易的栄養源としては申し分ない。
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