最後に、恋人。
「・・・・・孝之、帰らなくていいの?? 折角のお休みの日なのに、コドモさんと遊びたいでしょ??」
「・・・・別に」
正直、由紀が心配で仕方ない。
でも、ここにいたところでオレには何も出来ない。
「ワタシは大丈夫。 孝之が気に留める事じゃない」
由紀がオレに帰る様に促す。
「大丈夫じゃないだろ。 由紀、死にそうじゃん」
「そりゃ、生きたいと思ってる人には『死ぬ』って一大事だよ。 でも、ワタシは違う。 死ぬ事は、大丈夫な事」
「・・・・・・」
言葉が出ない。
死ぬ事を選んだ由紀を否定出来ない。
『生きていれば良いことだってあるはずだ』なんて歯が浮きそうなセリフを言う気にもならない。
だって、どこにもそんな保障はない。
33歳。
もし、オレが由紀の立場だったら
オレも同じだったかもしれない。
夢を見れるほど、将来に期待出来るほど若くはなく
現実が、予想のつく未来が見えすぎていて
心の糧がないと、絶望が直視出来てしまう。
死を目の前にした由紀が穏やかな理由が、オレにも分からなくはなかった。
でも、そんな由紀が悲しかった。
由紀をそうさせた原因に、少なからずオレが関わっている事は確かな事。
病気だけじゃない。
オレも、由紀を死に追いやる原因だった。