最後に、恋人。




「・・・・・孝之、帰らなくていいの?? 折角のお休みの日なのに、コドモさんと遊びたいでしょ??」




「・・・・別に」




正直、由紀が心配で仕方ない。




でも、ここにいたところでオレには何も出来ない。




「ワタシは大丈夫。 孝之が気に留める事じゃない」





由紀がオレに帰る様に促す。





「大丈夫じゃないだろ。 由紀、死にそうじゃん」




「そりゃ、生きたいと思ってる人には『死ぬ』って一大事だよ。 でも、ワタシは違う。 死ぬ事は、大丈夫な事」




「・・・・・・」





言葉が出ない。




死ぬ事を選んだ由紀を否定出来ない。




『生きていれば良いことだってあるはずだ』なんて歯が浮きそうなセリフを言う気にもならない。




だって、どこにもそんな保障はない。









33歳。








もし、オレが由紀の立場だったら





オレも同じだったかもしれない。





夢を見れるほど、将来に期待出来るほど若くはなく




現実が、予想のつく未来が見えすぎていて





心の糧がないと、絶望が直視出来てしまう。





死を目の前にした由紀が穏やかな理由が、オレにも分からなくはなかった。




でも、そんな由紀が悲しかった。





由紀をそうさせた原因に、少なからずオレが関わっている事は確かな事。
















病気だけじゃない。













オレも、由紀を死に追いやる原因だった。
< 12 / 45 >

この作品をシェア

pagetop