最後に、恋人。




「・・・・コドモの写真とか、ないの??」




「・・・・あるけど・・・・」





「見せて」




オレが携帯の中の写真を探している時だった。




何気なくお茶を啜った由紀が『ゴホゴホッッ』と尋常じゃない苦しみ方をしながらむせた。




「由紀!! ・・・・救急車!!」




電話をかけようとするオレの手を由紀が止めた。




「・・・・かわいいね、この子は確実に美人さんになるよ・・・・」




由紀が肩で息をしながら、携帯に写る娘の写真を覗きこんだ。





「・・・・ありがとう。 それより由紀、大丈夫なのかよ」




「・・・・うん。 なんか最近、咳き込み方がわざとらしいくらい大袈裟になっちゃって・・・・」




そう言って由紀は、オレの娘の写真をみながら少し涙ぐんだ。




『むせすぎた』と言いながら、由紀はティッシュで目頭を押さえていたけど、違う。




由紀は子供が好きだった。




由紀だって、結婚して、子供を産みたかったんだろう。










オレは、由紀の夢を破って丸めて捨てて






別な女と叶えてしまった。
< 11 / 45 >

この作品をシェア

pagetop