初恋
私の顔を見るなり由香が言った。

「あんた、ヒドイ顔してるわよ」
「いきなり失礼ね。私の顔なんて見慣れてるでしょうに」
「違うわよ。顔色が悪いって言ってんのよ」

呆れた様にため息をつきながら、由香が私の正面に座った。
コーヒーに口をつけながら由香が言った。

「まぁね、あんたが元気はつらつとしてるとは思わなかったけど、ここまで思いつめてるとは思わなかったわ」
「別に思い詰めてるつもりはないけど・・・」

気まずくて視線を逸らした私を由香は頬杖をつきながら私を見ていた。
そして小さく息を吐いて言った。

「同じ様な顔をしてた人間があと2人いたわね」
「あとふたりって・・・由香、会ったの?!」

驚いて視線を向けると、由香はにかっと笑って言った。

「あんたはなんにも言ってくれないし、私がただ何もせずじっと待ってると思ってたの?会ってきたよ。田宮と・・・景一君にもね。そこで大体の話は聞いた」
「景にも会ったの?」
「そりゃそうでしょ。突然の田宮の登場で混乱してるのは沙羅だけじゃないでしょ。彼だって相当困惑してるだろうと思ってね。それに沙羅の事を一番理解してるのは景一君だと思うし」
「そっか・・・景にも会ったんだ」

私はあの夜以来、景に連絡すらしていない。
景とのこれから関係に答えの出せていない私は、景に会わせる顔がなかった。

「で?どっちの話から聞きたい?」

私の話を聞くという事で呼び出されたはずなのに、なぜか由香の話を聞くことになってしまった。
でも、それは私もずっと知りたかった事。
私は緊張しながら口を開いた。

「じゃあ・・・東吾の事から」

由香はコーヒーを一口飲んでから話し始めた。

「田宮に会って驚いた。あんなに影のある表情する奴じゃなかったからね」

由香はその時の事を思い出しながら、詳しく話してくれた。



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