・*不器用な2人*・(2)
「城島君、前髪跳ねてる」

涎を垂らして眠っていたらしく片手で乱暴に口元を拭う城島君に、ソッと指摘をする。

「マジで」と頭の悪そうなイントネーションで言って、彼は大きく溜息をついた。

城島君の前髪を押さえながら、隣りに座った石田君は彼の顔を覗き込む。

「おまえ、ちゃんと夜寝てる?」

その言葉の通りに、城島君の眼の下にはうっすらとくまが浮かんでいた。

「夜は忙しいから昼に寝てる。
平日は授業中とか、暇な時に」

眉間に皺を寄せながら疲れたように言って、城島君はまたテーブルに突っ伏す。

石田君が慌てて彼の肩を掴み、テーブルの上に枕代わりのハンカチを置く。

「部活忙しいの?」

そう訊ねると、「んー」とか「うー」とか、唸るような曖昧な答えが返って来る。

殆ど間を開けずに寝息が聞こえ始め、石田君が呆れ顔になる。

彼は腰に巻いていたジャージを解いて、城島君の肩にかける。

「優しいね。石田君のクセに」

私が言うと、石田君は微かに笑った。

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