・*不器用な2人*・(2)
荷物を片付けて移動の準備を始めながら、私たちは次に何処へ行こうかと話し合った。

離れたレーンにいたバスケ部2年生たちも既に移動した後らしく、彼らの使用していたテーブルを店員が片付けていた。

「そう言えば、白い奴いなかったね」

めぐちゃんが思い出したように言うと、梶君が苦笑いを浮かべて顔を上げる。

「いっ君って、こういうところ来なさそうなイメージ」

浅井君が興味なさそうにボソッと言うと、井上君も浅く頷く。

いつも一緒にいる浦和君も今日は見当たらなかった。

――付き合いの悪い人たちなのかな。

あまり印象の良くない彼と会えないことに少しだけ安堵をしながら、私は梶君たちと一緒にボーリング場を後にした。

「思い出したんだけど、バスケ部って去年の秋くらいに退学者出たよね」

淳君に言われて、私はフッとある光景を思い出す。

校庭の木々が枯れ始めて、風が冷たくなって来た頃。

放課後の体育館から1人の男子生徒が顧問によって引き摺りだされて来た。

右の頬には平手を打たれたらしく、真っ赤な痕が付いていた。

今にも泣きそうなよわよわしい表情を隠そうと、グッと俯いて唇を噛む彼を、何人かのバスケ部員が無言で眺めていた。

職員室へと引っ張って行かれる彼を、下校する生徒たちが驚いたように振り返っていた。

「あの人の名前を言ったら死ぬって噂、一時期流れたよね」

私が言うと、皆は苦い表情を浮かべながら頷いた。

「あの日の夜中に呼吸不全で救急搬送されたんだろ。

面白半分に話したら呪われるって」
< 118 / 128 >

この作品をシェア

pagetop