・*不器用な2人*・(2)

放課後、荷物を取りに教室へ立ち寄った。

机の上の落書きはすでに消されており、代わりに見覚えのある字で新しい文が書かれていた。

「明日は来て」

淳君が書いたものだと、すぐに分かった。

そしてあの落書きも彼が消してくれたのだと察しが付く。

穏やかな気持ちになりながら、私は教室を後にした。

下足室の壁には全学年の試験結果が並べて貼り出されていた。

下級生に知り合いがいなかったために今まで確認したこともなかったけれど、何気ない気持ちで2年の貼り出しに目をやった。

どうせ芳野君や城島君や井方君は載っていないだろうと思いながらも1位から名前を確認していき、私はハッとした。

14位のところに、「墓屋一郎」という名前を見付けたのだ。

――いっ君って、頭良かったんだ……。

あまりの意外性に唖然としていると、後ろから聞き慣れた金属音が聞こえた。

振り返ると、予想通りに2年の14位が立っており、不機嫌そうに私を見下ろしていた。

これから部活へ行くところなのか、それとも抜け出して来たのか、彼はパーカーにハーフパンツというラフな格好をしていた。

「成績、良いんだね……」

何か言わなければと思い咄嗟に思いついたことを口にすると、いっ君は眉間に深く皺を作った。

「この学校でその順位なんて、自慢にもなりませんけど……」

吐き捨てるように言って、彼は顎までずらしていたマスクを鼻まで戻す。

「充分すごいよ……」

本心から言ったつもりだったけれど、いっ君は3年の貼り出しを見て顔をクシャリと歪めた。

ただの嫌味にしか聞こえなかったのだろうか、それとも何か別のことが気に障ったのだろうか。

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