・*不器用な2人*・(2)
扉を開けるとすぐ、紅茶の匂いが鼻を掠めた。
聞きなれたオルゴールの音にホッとしながら足を踏み入れた私に、保健医さんが「いらっしゃい」と言ってくれた。
勧められていつもと同じ椅子に腰を下ろすと、来室記録を渡される。
私が記入をしている間に、保健医さんは黄色の封筒に気付いたらしい。
思い出したように両手をパンと叩いた。
「風野さん、特進クラスに選ばれたんだったね、おめでとう」
明るく言われ、私は「は!?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。
慌てて封筒の中から書類を取り出して中を確認する。
「あれ、まだ中見てなかったんだ?」
保健医さんは驚いたように目を丸くして、私の向かいに腰をおろした。
「2学期から特進クラスができるの。
2年と3年の合同クラスで、生徒は各学年から上位40人ずつ選ばれるんだよ」
初めて聞いた特進クラスというシステムに戸惑いと不安を覚えつつも、私は密に胸が高鳴った。
上位40名しか選ばれないクラスに、今のクラスメートはほとんど入ることができないだろう。
担任は黄色い封筒を私の分しか持っていなかったのだ。
1学期の間我慢をすれば、あのクラスから抜けることができる。
思わずガッツポーズをしそうになりながら、私は椅子の背もたれに背中を預けた。
「今日は答案返却の日だから、授業も早くに終わるのね」
保健医さんは静かな声で言い、また作業用机へと戻って行った。
私は持ち運んでいたMPをポケットから取り出し、イヤホンを耳に入れる。
静かな音と共に、何の波もない時間が流れていく。
――特進クラス。
今まで考えたこともなかった急な朗報に、私は少しだけ温かな気持ちになった。
聞きなれたオルゴールの音にホッとしながら足を踏み入れた私に、保健医さんが「いらっしゃい」と言ってくれた。
勧められていつもと同じ椅子に腰を下ろすと、来室記録を渡される。
私が記入をしている間に、保健医さんは黄色の封筒に気付いたらしい。
思い出したように両手をパンと叩いた。
「風野さん、特進クラスに選ばれたんだったね、おめでとう」
明るく言われ、私は「は!?」と素っ頓狂な声を上げてしまった。
慌てて封筒の中から書類を取り出して中を確認する。
「あれ、まだ中見てなかったんだ?」
保健医さんは驚いたように目を丸くして、私の向かいに腰をおろした。
「2学期から特進クラスができるの。
2年と3年の合同クラスで、生徒は各学年から上位40人ずつ選ばれるんだよ」
初めて聞いた特進クラスというシステムに戸惑いと不安を覚えつつも、私は密に胸が高鳴った。
上位40名しか選ばれないクラスに、今のクラスメートはほとんど入ることができないだろう。
担任は黄色い封筒を私の分しか持っていなかったのだ。
1学期の間我慢をすれば、あのクラスから抜けることができる。
思わずガッツポーズをしそうになりながら、私は椅子の背もたれに背中を預けた。
「今日は答案返却の日だから、授業も早くに終わるのね」
保健医さんは静かな声で言い、また作業用机へと戻って行った。
私は持ち運んでいたMPをポケットから取り出し、イヤホンを耳に入れる。
静かな音と共に、何の波もない時間が流れていく。
――特進クラス。
今まで考えたこともなかった急な朗報に、私は少しだけ温かな気持ちになった。