・*不器用な2人*・(2)
翌日から球技大会の練習は始まった。

県内1の底辺校というだけあり、学校行事の準備には無駄に時間を費やすのだ。

生徒たちの自己責任を強調し、教員たちはクーラーのきいた職員室で団欒をする。

球技大会までの1ヶ月間、授業のある日とまる1日練習の日が交互に組まれ、授業もほとんどが自習となる。

「風野、嫌ならサボれば良いよ」

適当な男友達と一緒に卓球にエントリーした淳君は、欠伸を噛み殺しながら面倒そうに言った。

そんなわけにもいかないだろうと思いつつ、是非そうしたいという気持ちも密に生まれつつあった。

「男バスなんかと関わったらロクなことないだろうし、風野が嫌って言えば先生たちも別の奴と替えてくれるよ」

そう言った淳君は、友達に呼ばれ、卓球台のある特活室へと向かって行ってしまった。

重い足取りのまま体育館へと向かう途中、背後からポンと肩を叩かれた。

振り返ると、バスケ部の2年生たちを引きつれた芳野君が、私へと笑みを浮かべているところだった。

彼の後ろには井方君や城島君を含めたバスケ部員たちがゾロゾロと歩いて来ており、全員いつも通り規定外の服装をしていた。

「風野さん、もしかして男バスの審判?」

芳野君に聞かれ、私がおずおずと頷くと、彼の背後にいた2年生たちがざわついた。

それは私を歓迎するものもあれば、拒絶するものもあり、1人1人の反応は様々だった。

不安を抱きつつ城島君へと視線を向けると、丁度彼と目が合った。

暗い顔つきだった彼はすぐに笑顔を作ってくれる。

不自然に引き攣った笑顔が気になりながらも、私もそっと笑い返した。
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