・*不器用な2人*・(2)
梶君の言葉に芳野君は呆れたような表情を浮かべながら言葉を続ける。

「他の部員ならまぁいいかもしれないけど。
城島はスポーツ推薦なんだ。
バスケやるためだけに入学したんだから、夜遅くまで練習するのだって当たり前じゃないか。
それに部活は好きでやってるんだし、本人の好きなようにさせてやれよ」

芳野君の言葉に梶君はあからさまに顔をしかめた。

傍らで聞いていた私でさえも、言い返したくなってしまったくらいだ。

いくらなんでもおかしいだろと思った。

反論しようとする梶君を、城島君が急いで遮った。

「梶先輩の言った通り、俺本気でバカだから。
スポーツまでサボったら本当にここに入った意味がなくなっちゃうんだよ。
勉強できる奴は部活やめていい大学目指せばいいけど、俺は本気で勉強できないから、部活に熱中するしかないんだ」

城島君は梶君に笑い掛けると、ずっと縮めていた姿勢を伸ばした。

丁度同じくらいの背丈がある芳野君と向かい合って、彼はまるで大人のように深く丁寧に頭を下げた。

「今日の3時半から練習ね。
遅れたらまた監督に怒られちゃうからね」

芳野君の言葉に「はい!」と大声で返事をすると、城島君は教室へと入って行った。
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