・*不器用な2人*・(2)
「バスケ部全員と会ったなら、サツキとも会ったんじゃない?」

そう言われ、私は首を傾げる。

芳野君のクラスへ行った時、芳野君が全員に同意を求めてしまったせいで、1人ずつの顔を見ていなかった。

多分あの中にいたとは思うけれど。

「どういう子?
特徴とかある?」

私が訊ねると、石田君は少し考えてから、「顔がいい」と言った。

「あと、背が結構高くて線が細いよね」

保健医さんがキーボードを打ちながらおっとりと言う。

「じゃあ、見た目はかなり綺麗なんですか」

「うん、女の子が放っておかないような顔立ちしてると思うよ」

――そんな子いたっけ。

記憶を少しずつ巻き戻していき、私は1人だけ心当たりのある男子を思い出す。

教室から顔を覗かせて「大地」と芳野君を呼んだ男子生徒。

背がすごく高かったのがなんとなく印象には残っていた。

ブカブカな制服や下がったズボンがなんとなくだらしない印象だったけれど、規定よりも痩せていたと考えることもできる。

顔だけはあまり思い出せなかったものの、多分間違いない。

「どういう人なの、井方君って」

訊ねると、石田君はすぐに「普通」と答えた。

「見た目が特別にいいし、中身も問題ないし、普通に明るくて社交的な感じ」

彼の言葉に保健医さんがすぐに頷いた。
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