・*不器用な2人*・(2)
「石田君、この子バスケ部の2年の城島君」

私が城島君を紹介すると、石田君はパッと視線を下に向けた。

城島君は石田君の顔を見ると立ち上がろうとしながら「はじめまして」と頭を下げる。

石田君は無言のまま頭を下げ、城島君へと近寄って行った。

「ムリに立たなくていいよ」

城島君の肩を押さえながら自分も座り込む。

「城島って下の名前なんて言うの」

「ハルト」

石田君は城島君の顔をまじまじと眺めながら、「どういう漢字」と訊ねる。

「太陽の陽に人って書いて陽人……」

城島君が言い終わらないうちに、石田君はポケットから金具の壊れたキーホルダーを取り出して、城島君の手に握らせた。

「それ、要る?」

城島君はポカンとしたまま手を開き、握らされたキーホルダーを覗き込む。

私も城島君に近付いて行って、西洋の剣を真似た小さなチャームを見た。

「何これ」

私が訊ねると石田君は肩をすくめて笑う。

「なんか部屋の整理してたら出てきた。
多分結構昔のやつだと思うんだけど、鞘が抜けるようになってるんだよ」

城島君が言われた通りに鞘を抜くと、半分塗装の落ちかけた剣の先が現れる。

ペーパーナイフにもならなさそうな安っぽい剣を、城島君はしばらくマジマジと眺めていた。

「これ、大丈夫なんですか」

城島君の呟きに石田君は「多分いいでしょ」と小声で言った。
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