・*不器用な2人*・(2)
購買の裏で、石田君はケーキを次々と開封してダストシュートへと入れて行った。
別に投げ入れるというわけではなく、1つ1つ丁寧に。
「食べないんだ」
私が呟くと、彼は少しだけ笑った。
「気持ち悪いじゃん。女子が手でこねて作った料理とか。食えるわけないよ」
「あぁ、そう……」
ストレートな物言いに腹を立てるのも馬鹿らしく、私は彼の足もとに座ったまま捨てられていくケーキを眺めていた。
食べてほしいなんて思っていない。
あんな顔しか見ていないような下級生たちから貰ったケーキをわざわざ食べる義理もないと思う。
それでも。
「私がもしケーキ作ってきたらどうする?」
私がボソッと言うと、石田君はケーキを持った手を止めた。
「作ってくれるの?」
真顔で聞かれ、慌てて「たとえばの話です」と言う。
「捨てはしないけど、食べれるかは分からないかなぁ……」
彼はそう言ってからパッと鼻を覆った。
「匂い甘過ぎてキモいね、これ」
残り1つのケーキを雑巾のようにつまんでダストシュートの中へと入れると、彼は蓋を勢いよく閉じた。
「つわりの人ってパンの匂いが駄目なんだって」
私が言うと、「は?」と石田君は眉をひそめてから小さく笑った。
「俺妊娠どころか結婚しない予定だから大丈夫」
石田君はそう言うと、両手をパンパンと叩いてケーキの粉を払い落した。
「好きな人とかいないの?
さっきの2年でも可愛い子結構いたじゃない」
私の言葉に彼は「そう?」と不思議そうに首を傾げた。
「付き合ったら、手繋ぐだのキスするだの抱き合うだの一緒に寝るだのそう言うことになるから……」
途中で言葉を切って、石田君は私を見下ろしてくる。
「風野さんも梶とそういうことしたわけ?」
私は慌てて首を振った。
「寝るまではしてないしするつもりもないから」
「そっか」
石田君はまた小さく笑って、私の隣りに座った。
手が触れるだけで顔をしかめる、腕を組もうとした女子を突き飛ばす……。
彼の接触への嫌悪は相変わらずで、まだ何も知らない下級生たちはそれを不快に思うことも多いらしい。
手作りの料理もちょっとしたスキンシップも駄目。
いくら石田君がカッコいいとは言っても、彼と付き合っていける女子が少ないことは確かだと思った。
別に投げ入れるというわけではなく、1つ1つ丁寧に。
「食べないんだ」
私が呟くと、彼は少しだけ笑った。
「気持ち悪いじゃん。女子が手でこねて作った料理とか。食えるわけないよ」
「あぁ、そう……」
ストレートな物言いに腹を立てるのも馬鹿らしく、私は彼の足もとに座ったまま捨てられていくケーキを眺めていた。
食べてほしいなんて思っていない。
あんな顔しか見ていないような下級生たちから貰ったケーキをわざわざ食べる義理もないと思う。
それでも。
「私がもしケーキ作ってきたらどうする?」
私がボソッと言うと、石田君はケーキを持った手を止めた。
「作ってくれるの?」
真顔で聞かれ、慌てて「たとえばの話です」と言う。
「捨てはしないけど、食べれるかは分からないかなぁ……」
彼はそう言ってからパッと鼻を覆った。
「匂い甘過ぎてキモいね、これ」
残り1つのケーキを雑巾のようにつまんでダストシュートの中へと入れると、彼は蓋を勢いよく閉じた。
「つわりの人ってパンの匂いが駄目なんだって」
私が言うと、「は?」と石田君は眉をひそめてから小さく笑った。
「俺妊娠どころか結婚しない予定だから大丈夫」
石田君はそう言うと、両手をパンパンと叩いてケーキの粉を払い落した。
「好きな人とかいないの?
さっきの2年でも可愛い子結構いたじゃない」
私の言葉に彼は「そう?」と不思議そうに首を傾げた。
「付き合ったら、手繋ぐだのキスするだの抱き合うだの一緒に寝るだのそう言うことになるから……」
途中で言葉を切って、石田君は私を見下ろしてくる。
「風野さんも梶とそういうことしたわけ?」
私は慌てて首を振った。
「寝るまではしてないしするつもりもないから」
「そっか」
石田君はまた小さく笑って、私の隣りに座った。
手が触れるだけで顔をしかめる、腕を組もうとした女子を突き飛ばす……。
彼の接触への嫌悪は相変わらずで、まだ何も知らない下級生たちはそれを不快に思うことも多いらしい。
手作りの料理もちょっとしたスキンシップも駄目。
いくら石田君がカッコいいとは言っても、彼と付き合っていける女子が少ないことは確かだと思った。