続・鉢植右から3番目


 出し巻卵をくるりとまいていると、何か気配がするぞ、と思ってパッと後ろを振り返った。

 そうしたら、ヤツが立っていた。

「うひゃあ!」

 私は驚いてシンクに腰を打つ。いたたたた・・・と腰を撫でさする私を見て、ヤツはちょっと呆れたらしかった。

「・・・大丈夫?」

「あ、はいはい。お帰りなさい。驚いたわ~」

「声、かけたんだけどな。・・・都、これ」

 ん?とヤツを見ると、何やら大きな紙袋を両手で抱えている。

「何、それ?」

 ヤツが黙ってテーブルに置いた紙袋の中を覗き込んだ。

 そこには大ぶりの鉢に入った緑の葉っぱと赤い実が。

「おおー!新しい鉢植買ってくれたんだ?嬉しいなあ!これは――――――」

 テンションが上がった私が叫ぶと、ヤツが後ろを引き取った。

「いちご」

「かーわいい~!」

 両手を叩いて顔を上げると、ヤツは既に寝室へ向かいながら言った。

「食べられるものがいいんでしょ」

 え? 私は一瞬考え込んで、ああ、と頷いた。


< 109 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop