続・鉢植右から3番目


 ・・・覚えてたんですね、あの呟きを。私は微かに苦笑する。サルビアを割ってしまったときに、次は食べれるものにしようかなと言ったのを覚えていたらしい。

 でも買ってきてくれるとは思ってなかった!

 袋から新しい鉢植を取りだす。それは大きくて、玄関横に置いてある棚には置けそうもない。

 だけどもベランダに置こうかな。ベランダも日当たりがいいし、確かいちごは日当たりが大事だったはず―――――――

 嬉しく緑の葉の中にちらほらと見えるいちご達を眺める。うーん、春から秋にかけての分を買ってくれたらしいから、今でも食べられるけど・・・勿体無い。

 収穫、すべき?などと悩みながら葉を避けて実を数える。

 すると、カードが挟んであるのを発見した。

 指で挟んで取り出したカラフルなカードの中では、『Happy Birthday』の文字が躍っている。

「――――――――」

 私は思わず口に手を当てた。

 ・・・そういえば、去年も覚えててくれたんだった、私の誕生日・・・。

 後ろで卵が焦げかけている。それも忘れて、私は可愛い鉢植を見下ろしていた。

 ・・・・誕生日プレゼントなんだ、これ。

 滲んだ視界でまだ小さな赤い実を撫でる。

 ヤツが出てきたら、お礼を言おう。

 可愛いプレゼント、ありがとうって。そして美味しいご飯を出してあげなきゃ――――――――

「あ!!」

 やっと気付いてフライパンに向き直った。

 卵焼きは、可哀想なことになっていた。



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