続・鉢植右から3番目


 ヤツは変わらなかったけど、その変わらなさが安心材料でもあったのだ。

 そう、私には、これくらいが丁度いいのかもって。

 バタバタする私には、この男くらいどっしりした態度が望ましいのかもって。


 子供の出産予定日は、3月の下旬だった。私は来年のカレンダーを買ったらすぐに〇をつけようと決心する。

 それを嬉しく話していたら、ヤツがぼそっと言った。

「先のことばかりでなくて」

「え?」

 何を言ったかが判らなくて、包丁を持ったままで私は振り返る。

 9月の中旬で、晩ご飯を作っているところだった。

 案外早く帰ってきたヤツが、先にお風呂に入ったのでさっぱりとした格好で、テーブルの向こうから私を見ていた。

「今を大事にしないと。薬、飲んでないでしょ」

「あ」

 どうしてバレてんだろ。確かに、昨日も今日も鉄分飲むのを忘れた私だった。

「・・・ご、ごめん。飲みます~」

 料理を一時停止して、いそいそと鉄分を水で飲んだ。

 こん、とコップを置いて、いい訳をしながら膨れる。

「だって、ほら。やっぱり楽しみなんですー。仕方ないでしょ。いいじゃん計画として話すくらい~」



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