悪魔的に双子。

明後日を向いた空

ご飯を食べ終わったあと、わたしは有志の手を引っ張って自分の部屋に連れてった。


先ほどママに渡されたメモを渡して、会いにきて欲しいというママからの伝言を伝える。


有志は始め硬い顔をしてわたしの話を聞いていた。


無理もない。


もうずっと音沙汰なかったのに、いきなり会いにこいだなんて、自分勝手だ。


でも、有志が、


「僕は行かない。青だけ行ってくれば」


と言ったとき、まさかの答えにどう反応していいか分からなかった。


会いに行くって言うと思ったのに。


だってママはアメリカに行ってしまうのだ。


そう簡単に会えなくなる。


自分が案外、母親との再会を喜んでいることに気づく。


会いたい、と言われたことに素直に幸せを感じていた。


「有志はママと会えなくなるのが辛くないの?」


「今までも会ってなかったじゃない」


もっともな応えに言葉がつまる。


少し悲しくなった。


有志はわたしの様子に、困ったように微笑んで言った。


「青は、行ってきなよ。一緒の時間を過ごしたいんでしょ?」


優しい声音に、わたしはうん、とはうなづけなかった。


ふいに、過去の記憶が脳裏をよぎる。


泣いてるお父さんと、それを見つめる有志。


有志が行かないのには訳がある。


バカみたいだ。


忘れていたわけではないのに、こんな話を有志にして。


「………行かない」


「えっ」


「有志が行かないなら、わたしも行かない」


有志が行かないのに、わたしが行けるわけない。


だってわたしたちは、ずっと一緒。


二人で一人だから。


「ちょ、青っ」


驚く有志の声も聞かずに、わたしは自分の部屋を飛び出していた。
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