悪魔的に双子。
「やっぱいい、わたし外で待ってる。」


病院の中にまで入ったわたしだけど、いざ病室の前に来ると怖じ気づいて足が止まってしまった。


「大丈夫だよ、お母さんもきっと喜ぶ」


んなわけあるか!


わたしとは他人も同然なのに。


しかし唯流と同じ血が流れる百合人くんにはわたしのしりごみなどなんの思案材料にもならないらしく、半ば引きずるようにしてわたしを病室の中に入れてしまった。


「お母さん、寝てる?」


カーテンを開けた先には、おぼろげなかつての印象より少し老けた義理の祖母がいた。


「いいえ、本を読んでいたところよ。まったく、電車代もったいないからこんな頻繁に来なくていいのに。」


そう言いつつも嬉しそうな声。


やわらかな声音そのままの優しげな笑顔がそこにあり、わたしの姿をとらえた目が軽く見開かれた。


「………青ちゃん?」


百合人くんと同じ子犬みたいに真っ黒な瞳がきらきらと輝く。


「まぁ、驚いた、あなた青ちゃんね‼
久しぶりねぇ、あみこったら全然会わせてくれないんだもの。」


予想外の歓迎っぷりにわたしはどう反応したらいいか分からなかった。


「お母さん、そんな大きな声だしたら迷惑。それに青ちゃんがびっくりしてる」


冷静な顔でつっこむ百合人くんに、百合人くんのお母さんは子どものように頬を膨らませてみせた。


「あんたが知らせてくれなかったからでしょ、百合人。まったく。青ちゃんが来るって分かってれば売店でお菓子でも買っておいたのに。」


いやいや、おかまいなく。


そう言いたかったのだが、声がでなくて口をパクパクさせるだけだった。


わたしの様子に、そっくりな顔立ちをした親子は顔を見合わせ、くすりと笑った。
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