悪魔的に双子。
「なぁんでそんなこと隠してたんで?」


とりあえず落ち着かせようと蓮をベンチに座らせると、蓮は好奇心というより、至極不思議そうな顔をして言った。


「べつに隠してた訳じゃないよ。ただわざわざ言うのも変だし、黙ってたら誰も気づかないしで、そのままにしてたら、なんかその方が楽だなぁってなっちゃったの」


自分の耳で聴いても妙に言い訳じみてるけど、こんな風にしか言いようがない。


「真昼王子は?」


王子呼びに顔をしかめつつも、一応のごとく口を開く。


「べつに」


………べつに、ってなんだそりゃ。


まぁ、言いようがないよなぁとも思う。


故意に隠してた部分がないわけじゃないけど、ここまでずるずる誰にも教えなかったのは、ほとんどなりゆきだ。


「……それにしても、今の話聞くと、唯流姫ってますます恐ろしいですね」


ほえ?


「なんで」


わたしの問いに蓮は笑う。


「だってそうでしょ。義理とはいえ兄妹だってこと、さすがに先生たちは知ってるのに、それを全校の前で堂々暴露なんて。知ってる先生たちはさぞかし複雑な心境だったと思いますよ」


確かに。


でも………


「唯流はそのへんのことは考えないからなぁ」


唯流は直球。


自分が行くと決めた先のことしか考えていない。


外野の事情なんて、あのお姫様からすれば論の外なのだ。


「そしてさすがは唯流姫の双子の兄。真昼王子も負けていない、と」


蓮のにやにや笑いが真昼に向けられ、ついでわたしに向けられる。


「……どういう意味だよ」


真昼の桃色の唇から漏れたのはことのほか低い声で、わたしは思わずびくりと身体をすくませた。


しかし蓮はどこ吹く風で、よいしょ、とベンチから立ち上がる。


「さて、と。あんまりお母さまを待たせてもあれなんで、わたしたちはそろそろおいとまします。」


あまりにもあっさりしているので目を見開く。


「あれ、もっと詮索されるかと思った」


「……青さんのそういう正直はとこは好きですよ」


苦笑を漏らしながら、蓮がひらひらと手を振る。


「じゃ、また今度」


田城もにこっとわたしたちに微笑みかける。


「じゃ、また学校で」


「………うん」


なんとか笑みを返して手を振り返すと、背を向きかけた田城があっ、と声を漏らして再びこちらを向いた。


「2人とも、早く仲直りしなよ」


え?と疑問を投げかける暇も与えず、田城は蓮の後を追っていってしまった。


残ったのはちょっぴり気まずいわたしと真昼。


真昼がははっ、と力のない笑い声をあげる。


「青、怒ってること、成海に見透かされてるじゃん」


「………真昼だって、蓮になんか言われてたじゃない」


どちらともなく、はぁ、とため息をついた。




< 259 / 272 >

この作品をシェア

pagetop