悪魔的に双子。
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「お世話かけました。」
わたしは下駄箱の前で真昼にぺこりと頭を下げた。
結局ナメクジを外に出すのも洗うのも真昼にやらせてしまった。
「……別に」
真昼は素っ気ない言葉を返して、ふっと顔をくもらせた。
「…ねぇ、青」
「なぁに?」
真昼がわたしの顔を覗き込んでいった。
「最近、誰かのうらみ買うようなことあった?」
「あったよ」
正直に答えると真昼の顔がたちまち険しくなった。
「何それ」
「どっかの誰かさんが弁当忘れるような間抜けな所業働いたせいで可愛い可愛い女の子たちの恨み絶賛買取中です。」
「…っう」
真昼はしょぼんとなって下を向いた。
少し可哀想になって真昼の頭をぽんぽんしながら尋ねた。
「何でそんなこと聞くの?」
真昼の唇がつんっと凛太朗先輩ばりに尖る。
「だって、ナメクジが上履きの中入るなんて中々ないよ、ふつう。」
「まぁね」
確かに誰かの嫌がらせの可能性もないではなかった。
「まぁ、わたしはどっちでもいいんだけど。」
自然に入ったのであろうが人の為せる業であろうが同じことだ。
「どっちでもいいわけないよっ何言ってんだよ‼」
真昼は横を向いていたわたしの頭をぐいっと自分の方に向けて、わたしの目を覗き込んだ。
「いやがらせかもしれないんだよ?いいわけがないよ」
「大丈夫だよ」
わたしは真昼ににっこりと微笑んだ。
「真昼と唯流のおかげでいやがらせには免疫あるから」
「……」
今はあまりないけど、昔は有志と二人してしょっちゅう泣かされてた。
あからさまに嫌悪の感情向けられたりするのは嫌だけれど、それが物理的なもので直接感情の見えないものであれば対して応えない。
ナメクジは勘弁だけど。
真昼と唯流のかつてのいやがらせの中には子どものいたずらではすまされないものもあった。
「ほんと、大丈夫だから。心配してくれてありがと」
まだ何か言いたそうな真昼にそれだけ言うと、わたしは靴下のまま教室に足を向けた。
「あっ、待って」
呼び止める声に振り返ると、なぜか真昼が上履きをぬいでわたしに差し出していた。