OCEAN SONG

だけど、目は笑っているようで
本気で怒っているわけではないようだ。

「ごめん。だけど、本当に迷惑だったら
付いてこないよね?」

私は少し、意地の悪い笑みを見せる。

彼は『しまった』というように
がしがしと頭を掻いてこう言い訳した。

「渡したいものがあるからって言ったから、
ただ付いてきただけだ」

と。

私はへえ、と返してまた
前を向いて歩き出した。

だけど本当は、渡したいものが、
渡したいものの中身が気になる
ということを知っている。

私は心の中でクスッと笑みを漏らした。

「…おい」

「は?」

内野くんが、私を呼び止めた。

「…よかったら」

ふい、と横を向いて内野くんは言った。

「…後ろ、乗るか?」

「え、いいよ!私、重いもん!」

私は慌てて、首を横に振る。

私の体重で彼が潰れて
しまっては大変だ。

「いいから!早く!暑いんだから」

内野くんは無理矢理、強引に
手を引いて後ろの荷台に私を座らせた。

「行くぞ!道を教えてくれ」

「わかった。ここを真っ直ぐ…」

私は内野くんの脇腹に掴まり、
胸のなかがドキドキと波打つ中で
自分の家の道のりを教えた。
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