OCEAN SONG

「ここ。ちょっと待ってて。
今すぐ持ってくるから」

私は彼にそう告げて
バタバタと慌ただしく

ドアを開けて階段を
かけ上った。

机の引き出しから
ラッピングに包まれた

ノートを取りだし、
また階段をかけ下りた。

「はい。これ」

私は、さっと素早くノートを手渡した。

「中身は何?」

「秘密」

「開けていい?」

「どうぞ」

ガサガサと音をたてて
ラッピングが開かれる音がする。

「おっ」

という声がして、彼の表情を
伺うと、嬉しそうに瞳を
輝かせて笑っていた。

「これ、欲しかったんだよ!ありがとな」

と言って、内野くんは私の頭に
自分の手をぽんと置いた。

その仕草に、一瞬、胸がドキンと弾んだ。

そのドキドキは、なかなか治まらない。

「いいえ」

と返すのが精一杯だった。

本当は「どういたしまして」
と言いたいのに。

内野くんは、少し早めに帰ると言って
そのまま帰っていった。

熱中症になったら
たまったもんじゃない、と笑って。

私は、彼の姿が見えなくなるまで見送った。

暑い、暑い、昼間のことだった。

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