Clover -フタリノキオク-




 現在

 2007年 11月 25日




 -Rin-




 「ふぅ……」


 窓から映る寂しげな景色に、
 小さくため息をつく。

 病室のベッドから見渡せる、
 青い空と鉄の群れ。


 変化の欠片も見えない
 こんな風景、もう慣れた。



 いや、新鮮だと感じていた瞬間はあった。



 毎日のように。


 そんなことを考えていたって
 良い解決策がでるわけでもなく、
 また同じようにため息をついた。


 すると、単調なリズムで二回
 病室の扉をノックする音が聞こえた。




 「入るわよ」

 『どうぞ』



 返事とともに
 扉に目を向けてみると、
 そこに立っているのは女性だった。

 美しい容姿を持つその女性は、
 何食わぬ表情で部屋へ入った。



 けれど……。




 『あの……』


 「松永です。松永弘江」


 そう言ってから、
 弘江さんは微笑んだ。

 つられて小さく、
 私の口元も釣り上がる。


 私が名前を聞こうとしたとき、
 自ら名乗った。



 やっぱり
 私はこの人を覚えている。



 そして、
 弘江さんも知っているんだ。






 私と―――、


 私の病気のことを。





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