《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》
 覇龍は斬汰に一発で駄目出しをされたのも面白くなかったのだ。


「これなら淵が良く解るんだ。スリャッ!」


 精一杯の嫌味を込めた大結界にも構わず、斬汰は両腕をまくって高々と突き上げる。

 始めは指先にチロチロと灯っていただけの霊炎が、「スリャッ!」また放った斬汰の気合いと共にその手を包み、見る間に巨大化していった。


「ソリャ。ソリャソリャソリャァッ」


 その霊炎で出来た巨大な手で霊穴の淵を掴むと、熱した飴を延ばすように引っ張る。


「ウヌヌヌゥゥ……ホイ、ホイ、ホイっと」


 斬汰は延ばした淵を器用に結んでいく。まるで生ゴミの袋を縛るかのように、いとも容易く霊穴を塞いでしまった。


「ホイ、一丁上がりだ」


「斬汰、お見事だわっ」


「さすがのぉ、手際だなぁぁ」


 霊炎で出来た手は消え去り、元の大きさに戻った。斬汰はポンポンと手を払って咲邪達に向き直ると、にっこり微笑んだ。


「んじゃぁ、結界を閉じるぞぉぉ……アキシャビヤウン」



  シャッ



 覇龍が真言を唱えると、ブラインドを降ろすような音と共に、広大に広がっていた結界が一瞬で閉じられた。

そこには今までの出来事が嘘だったかのように、何の変哲も無いただのクレゾール臭い病室がそこに在る。


「ミツキ……」


 ベッドから半身を起こしたままの状態で、まだ息子との別れの余韻が抜け切らない前田がポツリと零した。


「ミツキ君はぁ、これから冥界に送られてぇ、また輪廻の螺旋に戻ることが出来るんだぁ」


 覇龍が前田を慰めるように、魂の行く末について説いてやる。


「そうよ。幸せでは無かったかもしれないけど、不幸では無かったと思うわよ?」


 咲邪もそれを後押しした。


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