スイート・プロポーズ

呼び止めるような薫の声が聞こえたが、美琴は無視した。

もう、関係のない―――過去の人。

そう自分に言い聞かせる。


ある程度歩いて、美琴はようやく歩調を緩めた。


(・・・・・・嫌な気分)


酒でも飲んで紛らわそうにも、美琴はかなり強いから、酔えない。

こういう時、下戸が羨ましくなる。


「―――美琴!!」

「な・・・・・・っ」


肩を掴まれ、強引に振り向かされる。

視界に飛び込むのは、呼吸の荒い薫。


「なんで・・・・・・」


追いかけてきたのか。

そう聞こうと思ったが、薫が息を整えるのに必死だから、美琴は仕方なく黙っていた。


「・・・・・・さっきの人、どうしたの?」


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